アート思考のはじめ方

アート思考で見つける、日常の「歩く」に潜む気づき

Tags: アート思考, 日常, 気づき, 視点, 歩く

私たちは普段、何気なく「歩く」という行為をしています。目的地へ移動するため、運動するため、あるいはただ散歩を楽しむためかもしれません。しかし、この「歩く」というあたりまえの行動の中に、アート思考の視点を取り入れることで、普段は見過ごしている多くの気づきや発見が潜んでいることに気づくことができます。

アート思考とは、アーティストのように物事を捉え、既存の価値観や常識を問い直し、独自の視点から新しい意味や価値を生み出す考え方です。それは、特別な才能や知識が必要なものではなく、日々の生活の中で誰もが実践できる「ものの見方」でもあります。

この記事では、「歩く」というあたりまえの行為をアート思考でどのように見つめ直し、そこからどのような気づきが得られるのかを探求していきます。

「歩く」を分解してみる

私たちは「歩く」とき、通常は目的地や歩く目的を意識します。しかし、少し立ち止まって、あるいは歩きながら、その行為そのものを意識してみることから始めてみましょう。

1. 体の感覚に意識を向ける

地面を踏む足の裏の感触はどうでしょうか。アスファルト、土、石畳など、場所によって感触は異なります。足の動き、膝や股関節の微妙な動き、腕の振り、体の重心の移動など、一つ一つの動作に意識を向けてみます。呼吸のリズムはどうでしょう。意識すると、普段は無意識に行っている体の働きに驚くかもしれません。

2. 周囲の五感に意識を向ける

歩いているときに、あなたは周囲の何を「見て」いるでしょうか。目に入る景色はもちろん、耳に入る音、鼻で感じる匂い、頬をなでる風の感触など、五感を研ぎ澄ませてみます。

こうした五感からの情報は、私たちが「歩く」という行為の中で受け取っているにも関わらず、脳が無意識のうちに取捨選択してしまっているものです。意識的にそれらを拾い上げることで、世界がより豊かに感じられるようになります。

「なぜ歩くのか?」を問い直す

「歩く」目的は明確かもしれません。しかし、その「なぜ」をさらに深く掘り下げてみましょう。

さらに、「歩く」という行為そのものに目的を持たせないという実験も面白いかもしれません。目的地を決めずに、ただ「足が向くままに」歩いてみるのです。そうすると、普段は気づかない場所にたどり着いたり、新しい発見があったりします。これは、まるで「さまよう」「ふらつく」といった、目的から解放された歩き方であり、そこから思わぬ発想が生まれることもあります。

周囲の環境を「作品」として見てみる

いつもの道、見慣れた街並み。これらを「あたりまえの景色」として通り過ぎるのではなく、まるでギャラリーの作品を鑑賞するかのように、じっくりと観察してみます。

このように、周囲の環境を「あたりまえのもの」としてではなく、「そこに存在する独自の何か」として見つめ直すことで、日常の景色が全く違って見えてくることがあります。それはまるで、日常の中に隠されたアート作品を見つけるような体験です。

「歩く」ことから生まれる内省

歩いている時間は、自分自身と向き合う時間でもあります。歩く一定のリズムは、思考を整理したり、新しいアイデアを浮かばせたりするのに適していると言われます。

歩きながら、自分の内面に意識を向けてみましょう。

そして、ふと「立ち止まる」という行為も大切にしてみてください。立ち止まることで、それまで流れていた時間や景色が静止し、全く新しい視点や気づきが得られることがあります。

まとめ:一歩から始まるアート思考

「歩く」という、私たちが毎日あたりまえに行っている行為。そこにアート思考の視点を少し加えるだけで、その体験は驚くほど豊かなものに変わります。

これらは全て、日常の「あたりまえ」の中に潜む問いを見つけ、新しい視点から物事を捉え直すアート思考の実践に繋がります。特別な場所や道具は必要ありません。必要なのは、ほんの少しの意識と好奇心だけです。

今日、あなたが一歩踏み出すその瞬間から、「歩く」という日常が、新しい発見と気づきに満ちたアート体験へと変わるかもしれません。まずは、いつもの道を少しだけ意識して歩いてみてはいかがでしょうか。